成長期が終わるまで筋トレをしてはいけない、は本当か?

「子どものうちに筋肉を付けると背が伸びなくなる」という話を耳にしたことはありませんか?スポーツをしていると身体づくりは必要ですし、最近は小学生のうちから本格的に競技に打ち込む子も増えているので、身体づくりの一環として筋肉トレーニングをした方が良いのか悩む方もいると思います。

 今回は、成長期前の筋肉トレーニングについてお話していきますね。

  

 

骨は細胞分裂で伸びていく

 筋肉を付けると背が伸びない、というイメージを持たれている方の中には、「筋肉が引っ張る力で、骨が伸びる力を邪魔してしまうのではないか」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

子どもの骨はそれぞれの骨の両端に骨端線という、骨の細胞が分裂し続けている部分があり、その部分でどんどん細胞が増えていくことで骨が伸び、身長が高くなっていきます。つまり、骨は何かに引っ張られる力で伸びているのではなく、細胞分裂によって体積が大きくなっているのです。そのことからもわかるように、骨が伸びようとする力は、筋肉が骨を引く力なんかよりずっと強いのです。

 

子どもの筋トレが成長に与える影響

 ではなぜ、「成長期前に筋肉をつけると背が伸びない」と言われるようになったのでしょうか。ここで、子どもの筋トレに関して世間でよく聞かれるお話について、検証してみたいと思います。

  • 筋トレ自体が子どもの成長を阻害する説

実は筋トレによって子どもの成長が阻害されるという事を証明した研究結果はありません。逆に適切な筋トレであればトレーニングによって成長ホルモンの分泌が促され、子どもの成長を促進すると考えられています。ただし、トレーニングで筋肉がついた結果、基礎代謝があがり消費カロリーがアップしたにも関わらず、食事量を増やさなかった場合、栄養不足により成長が妨げられる可能性はあると思います。

 

  • 筋トレによって骨端軟骨を損傷する説

これはあながち間違いではありません。成長期に骨が伸びる方向に強い負荷がかかるトレーニング(重りをもってのスクワットなど)を行うと、骨端軟骨が圧迫され損傷する可能性があります。成長期前~成長期の骨端軟骨が残っている子どもが筋トレを行う場合は、重りは使わず自重でのトレーニングを行う方が良いでしょう。

 

  • 成長期前の子どもは男性ホルモンの分泌が少ないため、筋トレの効果が出ない説

男性ホルモンは、筋力の向上に不可欠というわけではありません。実際、男性ホルモンをほとんど分泌しない女性や高齢者であっても、筋トレによって筋力は向上しますよね。なので、成長期前の子どもであってもトレーニングによって筋力を向上させることはできます。

 

子どもの筋肉トレーニングに関するガイドライン

 成長期前~成長期の子どもではトレーニングによって成長を阻害しないように注意する必要があるため、成長期が終わり体が大人と同じようになった子と同じようなトレーニングはできません。具体的なトレーニング方法について、NSCA(National Strength and Conditioning Assotiation)が出している、青少年のレジスタンストレーニングのガイドラインから抜粋してご紹介しますね。

・トレーニングは毎日ではなく、1日おきに週2~3回程度にとどめます。

・筋トレをする前は必ず10~15分程度のウォーミングアップを行うようにします。

・1回のトレーニングにおいては、同じメニューでたくさんの回数を行う事はせず、色々なメニューを少しずつ行うようにします。

・1つのメニューは10~15回程度を1セットとし、最初は1セットのみで開始します。慣れてきたら2~3セットまで増やすことも考えます。

 

子どもが筋肉トレーニングをすることのメリット

 子どもであっても適切な筋肉トレーニングを行う事で、筋力、筋持久力だけでなく、心肺機能の向上や身体組成の改善、血中の脂質濃度の低下、骨密度の上昇、メンタル強化などの効果を得られるとする研究結果があります。(Faigenbaum, A. Strength training and children’s health. J Phys Educ, Rec Dance. 72: 24-30, 2001.)さらには関節の周りの筋肉のバランスを改善したり、身体組成を改善し体重を適正化したりすることで、傷害のリスクも減らす効果があるとされています。(Faigenbaum, A., and J. Schram. Can resistance training reduce injuries in youth sports? Strength and Conditioning, 26(3): 16-21. 2004.)

ただし、これらは有資格者の管理下で、適切な強度のトレーニングを行った場合の結果です。子ども達はプロ選手や高校生選手に憧れ、同じようにトレーニングをしたがることもあるでしょう。しかし、先ほどもお伝えした通り、筋トレはやり方を間違えると骨端軟骨を損傷するリスクもあるため、行う際はガイドラインの内容を参考に、お子さんの体に過度な負担がかからないように細心の注意を払って行うようにしましょう。

 

The following two tabs change content below.
羽山涼子

羽山涼子

医師・キッズ食育マスタートレーナー・スポーツキッズ食育アドバイザリー講師

3歳から6歳までの食育で子どもの個性を伸ばす!魔法の食育ヒント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

よく読まれている記事