我が子が大学生になったときの食生活はどうなる?理想と実態

 我が子も、いずれは大学や専門学校に進学するかもしれませんよね。大学生は実際にどんな食生活を送っているのでしょうか。

 今回は、公立大学で特任教員として大学生の食育事業を推進している私から見た大学生の食生活の理想と実態についてご紹介します。

 

我が子が大学生になったときの理想の食生活

 我が子が大学生になったとき、どんな食生活をして欲しいですか?

 

 自宅から大学に通うのか、それとも1人暮らしをするのかで我が子の食生活は大きく変わります。自宅生だと私たち親が食事を用意してあげられることも多いですし、自分で作るにしても食材は揃っているのでバランスのとれた食生活ができるかもしれません。友人との外食やアルバイト先での食事が増えたとしても、基本的に自宅で食事ができたら親としては安心ですよね。

 

 1人暮らしの我が子の食生活の理想はどうでしょうか。子どものときから食育に触れ、食事の大切さがわかっているお子さんならしっかり自炊ができると思います。料理を友人に振舞ったり、大学に持っていくお弁当も自分で作るかもしれませんね。

 

大学生の食生活

研究結果から見る大学生の食生活の実態

 

 なんとなく予想がつくと思いますが、大学生はライフステージの中で一番食事が乱れやすい時期だと言われています。

 

 厚生労働省が実施している平成27年「国民健康・栄養調査」1)によると、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は、若い世代ほど食べられていない傾向にあり、若い世代ほど栄養バランスに課題があることが示されています。特に大学生は、栄養バランスや食事時間が乱れ、食生活が最も乱れやすい世代だと報告されています2)。さらに、私が所属する大学の全学的な食生活調査では、データでは示していませんが、学年が上がるほど、朝食欠食の割合が上がり、食生活が乱れやすくなる傾向がわかっています。

 

 また、経済面をみると、大学生は限られた小遣いや収入の中でやり繰りしています。ある調査では「外食費を含む食費」を節約したいと回答する大学生が68%を占めており3)、健康を気遣った食事を摂るよりも食費以外に収入が使われている現状がありそうです。

 

大学生の実際の食生活

 

 実際の大学生を見ていると、個人差はあるのですが、やはり1人暮らしの学生は食生活が乱れやすいと感じます。麺類などの単品で済ませてしまう学生も多いですし、中にはお菓子が主食になってしまっている学生もいます。経済的な理由もあるのですが、大学生の話を聞いていると、食事を作る、いや、そもそも食べることが「面倒くさい」と思うのだそうです。夕方に会っても、「今日はまだ1食も食べてないです」という学生も度々います。

 

 このような食事に無関心な層の学生にアプローチしようと、食環境を整えたり、学生から学生に食育情報を発信するような仕組みを作ったりと試行錯誤の連続です。食事に無関心な学生には「食事を整えると体調が良くなる」「このような食事をしたほうがいい」というような情報を伝えても、中々興味を示してくれないので一筋縄ではいきません。

 

 一方で1人暮らしでも自炊が好きでお昼のお弁当を自分で作る学生もいます。自炊の環境が整っていない友人の分までお弁当を作ってあげたり、中にはパティシエ顔負けの手作りケーキやマカロンを持ってきて振舞ってくれる学生まで!食生活に関する意識は大きく差があると感じています。

 

コロナ禍で大学生の食選力がさらに重要となっている

 

 コロナ禍で現在大学では遠隔授業が主になっています。遠隔授業はリアルタイム配信のものもあるのですが、私の所属する大学ではオンデマンド配信が主で、指定された1週間のうちいつでも受講できる形の授業が多いです。

 

 大学生に話を聞いていると夜中に授業を受けている学生もおり、生活習慣が乱れてしまっている学生が多い印象です。夜遅くもしくは明け方まで起きているために食事が不規則になりますし、自宅での食事が多いので、コロナ禍ではより大学生自身が食事を自分で選ぶ力「食選力」が問われていると感じます。

 

子どもの頃の食育が大事

 

 大学生の食生活を見ていると、子どもの頃の食育がどれだけ大事なのか、身に染みて感じます。子どもが食に興味を持つ年齢は3~9歳と言われています。できるだけ、この時期に食に関する経験を積んでほしいです。もちろん、もう過ぎてしまったから手遅れになるわけではありません。大学生になっても、社会人になっても、食育はできます(事実、大学の食育活動で食に無関心な学生が自分で料理を作るまでになった事例もあります)。しかし、子どもの頃の食育に勝るものはありません。

 

 大学生の中には、料理が好きで実家暮らしでも家族の分まで食事を用意している学生もいます。その学生に「いつから料理をしているの?」と尋ねると「子どもの時からです。お母さんは手出しをせずに自分で料理ができるように見守っていたみたいです」と答えてくれました。子どもの頃の調理経験が今に活きている例ですね。

 子どもの頃から料理をすると、大人になると調理スキルが高く野菜を多く摂取するなど健康的な食生活を送る傾向が報告されていますし4)、子どもの頃の調理経験が自尊感情を高めるという研究報告もあります5)

 

 子どもの食育は、好き嫌いの克服につながったりと比較的すぐに結果が出ることもありますが、中々目にみえる結果が出ず、「これでいいのかな?」と思うこともあると思います。私も今は4歳の娘の野菜イヤイヤ期と格闘中で、娘に食育をしながらアプローチしていますが、「今の食育は娘に伝わっているのだろうか」とたまに不安になることもあります。

 

 でも、お子さんへの食育や調理経験は自立したときに必ずお子さんの糧になります。ママやパパには子どもの食育を学んで欲しいです。食育がよくわからないという方は、本サイトの多くの記事がヒントになります。ぜひ実践してみてくださいね。

 私も、子どもに食育をしながら、引き続き大学生の皆さんにも食事の大切さを伝えていきます。

 

 

【参考】

1)厚生労働省.平成27年国民健康・栄養調査結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou.pdf(2021-05-25アクセス)

2)徳永幹雄,橋本公雄.健康度・生活習慣の年代的差異及び授業前後での変化,24巻,57-67項(2002)

3)全国大学生協連合会.第50回学生生活実態調査全国総合データ

https://gakupass.univ.coop/life/con_01.html(2021-08-10アクセス)

4)DésiréeHagmannPhD, MichaelSiegristPhD, ChristinaHartmannPhD. Acquisition of Cooking Skills and Associations With Healthy Eating in Swiss Adults

,J Nutr Educ Behav, 52: 483−491.(2020)

5)掃部 美咲,吉本 優子,小松万里子,八竹 美輝,森 加容子,渡邊 英美,小切間 美保.小学生の家庭での調理経験が食事観,自尊感情,教科に対する関心に及ぼす影響,76 巻 4 号,65-76項(2018)

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中村早百合
キッズ食育トレーナー/管理栄養士/青空キッチン熊本尾ノ上スクール主宰(2018年9月〜)。熊本県熊本市在住。2児の母。管理栄養士養成校での助手や特定保健指導など管理栄養士として多くの方に携わる中で、子どもの頃からの食育の大切さを痛感し、キッズ食育トレーナーを取得。現在は熊本県立大学の食育推進室において特任講師として学食を活用した食生活改善事業や食育に関する研究を行うと同時に、熊本市東区で青空キッチン熊本尾ノ上スクールを開校中。 【ブログ】https://ameblo.jp/sayuri-shoku/

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