成長期のスポーツキッズが膝の痛みを訴えたら

 今回は成長期の子が気を付けたいスポーツ障害についてのお話です。

成長期に頻度の高いスポーツ障害

 成長期の子は急激に背が伸びます。「背が伸びる」というのは「骨が伸びる」という事ですが、成長期では骨の伸びるスピードに対して、筋肉や腱(筋肉が骨に付着する部分)の伸びるスピードが追い付かず、筋肉が引っ張られて身体が硬くなることがあります。

 これが足で起こると、大腿四頭筋という太ももの筋肉が緊張した状態になりますが、この状態でジャンプやダッシュなどの動きを繰り返すと、筋肉が骨に付着している部分が強く引っ張られてしまいます。大腿四頭筋は膝のお皿の骨の下に付着していますが、その部分には骨端線という成長期に骨が伸びていく部分があります。骨端線は成長軟骨とも呼ばれ、周囲の骨に比べると柔らかく弱いため、筋肉の力で引っ張り続けられると、はがれてしまう事があります。これをオスグット・シュラッター病と言います。

 オスグット・シュラッター病はバスケットボールやバレーボールなどジャンプ動作の多い競技や、サッカーなどのようにキック動作のある競技、陸上などダッシュ動作のある競技で多く見られます。11~13歳のサッカーチームを対象にしたある調査では、実に23%もの子どもにその症状がみられたとされており、成長期のスポーツキッズにとっては注意が必要な障害といえます。(鈴木英一ほか:Osgood-Schlatter病の成因と治療・予防 -身体特性と成長過程の観点から-臨床スポーツ医学 23(9): 1035-1043, 2006)

 

大腿四頭筋の柔軟性がポイント

 特に大腿四頭筋の柔軟性が低下している子では注意が必要なので、足をよく使う競技をしている子は、時々、大腿四頭筋の柔軟性を自分でチェックするようにしましょう。

方法は2つあります。1つ目は片膝をついた状態で座り、後ろの足の踵をお尻に近づけていく方法です。この時、手で軽く足首を引いても構いませんが、踵がお尻にくっつく所までいけば問題ありません。くっつかない場合は大腿四頭筋が硬くなっている状態です。

 

 もう1つは、うつ伏せに寝転んだ状態で、片足を曲げていきます。この時も手で軽く足首を引いても構いませんが、踵がお尻にくっつくまで曲がれば問題ありません。

 

 これらのチェックで大腿四頭筋の柔軟性が低下している場合は、この動作を毎日行い、大腿四頭筋のストレッチを行う事で予防になります。

 

軽症のうちに対処することが大切

 オスグット・シュラッター病の症状は膝のお皿の下の部分の痛みです。押すとさらに痛みが強くなり、同部位が熱をもったり腫れたりすることもあります。どこかでぶつけたり、ひねったりというきっかけがある怪我ではないので、練習を休む判断が難しく、痛みを我慢しながら練習を続けてしまう事が多いのですが、原因はオーバーユースなので、患部を休めてあげる必要があります。

 練習後に軽い痛みが出るだけ、というような軽症の場合は、活動を休止する必要はなく、練習前後のストレッチと練習後のアイシングをしっかり行うようにします。練習後の痛みが強くなる場合は、練習量を調整する必要がありますし、練習中や日常生活の中でも強い痛みが出るほどになった場合は、完全に活動を休止する必要があります。スポーツキッズにとって練習を休むという決断はとても辛いですよね。なので、症状が軽いうちに、しっかりと対処してあげる事が大切なのです。

 

後遺症が出る事もあるので注意

 オスグット・シュラッター病は成長軟骨の部分の弱さが原因で起こる障害なので、成長期が終わり骨が強くなれば自然と症状が軽快します。ただし、大人になってからのスポーツで同じ部位に強い力が加わったりすると、また痛みが再発することがあり、オスグット後遺症と呼ばれています。そうならないためにも、症状が軽快してもストレッチは続け、大腿四頭筋からの過剰な力が骨に加わらないようにすることが大切です。

 

 スポーツを頑張る子にとって、怪我はできるだけ避けたいものです。子どもは大人と違ってまだまだ体が未完成なので、激しすぎるトレーニングは障害の原因になります。スポーツキッズを支える大人たちは、オーバーユースになっていないかという事を常に気にかけながらサポートして欲しいと思います。

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羽山涼子

羽山涼子

医師・キッズ食育マスタートレーナー・スポーツキッズ食育アドバイザリー講師

3歳から6歳までの食育で子どもの個性を伸ばす!魔法の食育ヒント

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