近年、子どもの肥満が増えてきた原因のひとつと考えられているのは、ハンバーガーショップを代表とするファーストフードです。
みなさんも、手軽で安くて子どもが喜ぶけれど、身体には良くなさそうだし・・と、何となく不安を感じている方が少なくないのでは?
今回は、「ファーストフードとどのように付き合っていけば良いのか」について、お話したいと思います。
ファーストフードは、一般的に高脂肪・高カロリーな食品です。
例えば、子ども用のハンバーガーセットで、ハンバーガー+ポテト(S)+シェイクの組み合わせ。
これだけでも700kcal以上(※)になります。
これは3〜5歳の1日の必要エネルギーの半分以上になり、食べ過ぎは肥満につながります。
しかし、野菜類はほとんどなく、ビタミン・食物繊維は不足し、栄養の偏りが大きいです。
※マクドナルドHP ハッピーセットメニューの栄養情報より計算。
http://www.mcdonalds.co.jp/menu/happyset/index.html
また、高脂肪・高カロリー・低栄養であることの他にも、問題があります。
塩分が高く濃い味付けで、子どもの味覚形成へ悪影響を与える可能性があります。
嗜好性が強く、くせになりやすい味なので、日常の食事も濃い味や高脂肪なものを好むようになりがちです。
さらに、短時間で手軽に、あまり噛まずに食べられるため、食事時間の不規則や早食いをまねくことも考えられます。
そして、これらの悪い習慣は一度身についてしまうと、大人になっても続く傾向にあります。
子どものうちに生活習慣病まで発症することはまれですが、将来に肥満・生活習慣病という健康問題につながる可能性が高くなります。
こういう問題を考えると、子どもに食べさせないに越したことはないですが、それはなかなか難しいことかもしれません。
世界各国と同様、日本でもファーストフード店が増加し、いつでも、どこでも手軽に、しかも安価に利用できるようになりました。
お出かけをしていて、外食にしようとなった時に、早く提供してもらえ、安く済み、子どもも喜ぶファーストフードはとても便利です。
また、魅力的なテレビCMを見て、おまけのおもちゃ欲しさに子どもが行きたがることもあるし、ママ友達に誘われることもありますよね。
このような事情で、ファーストフードを完全に避けるのが難しいので、適度に利用するのは仕方ないことだと思います。
例えば、子どもが、友達と一緒に食べに行くことを楽しみにしているのに、それをいつも禁止するというのは現実的ではないと思います。
また、行きたがる子どもに対し、完全に「禁止」できるのは、親と行動をともにしている間だけ。
むやみに禁止していると、自分の足でお店に行けるようになった時に、反動が出る可能性もあります。
当然のことですが、ファーストフードを、1度食べるだけですぐ肥満や病気になったり、味覚がおかしくなったりするわけではありません。
完全に避けることよりも、「習慣化しないように上手に利用」し、「ファースフードばかり食べていたら身体に悪い」ということを子ども自身が理解出来るようにすることが大切だと思います。
そのために、ファーストフードを利用する時の工夫を5つ、以下に挙げてみました。
- ①月1〜2回まで、多くても週1回までの利用にとどめる。
- ②ドリンクは甘いジュースやシェイクではなく、野菜ジュースやノンカロリーのお茶を選ぶようにする。
- また、サイドメニューをフライドポテトでなくサラダなどにする。
- ③その日の他の食事や、翌日の食事で野菜を多めに摂るなどして、調整をする。
- ④「今日は“特別に”ハンバーガーを食べに行こうか」などと、「日常の食事ではない」ことを意識させるような声かけをする。
- ⑤「ちょっとしょっぱいから喉が渇くね」とか、「野菜が少ないから、夜ご飯にはたくさん野菜食べようね」など、栄養のことを意識させる声かけをする。(子どもの楽しい気分を損なわない程度に)
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- ※利用頻度を週1回までにしたのは、以下の文献を参考にしました。
1.中国系シンガポール人(45〜74歳の中高年)を対象にした調査で、ファーストフードを週2回以上摂取する人では、摂取しない人に比べて、糖尿病の発症リスクが27%、心疾患による死亡が56%上昇することが確認されました。
文献:western-style fast food intake and cardiometabolic risk in an Eastern country
Circulation 2012 Jul 10;126(2):182-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22753304
2.18〜30歳の白人とアフリカ系米国人に対する調査で、ファーストフード店での食事を週2回以上、15年間続けた人では、利用しない人に比べて肥満やインスリン抵抗性のリスクが高くなり、糖尿病になりやすい傾向がありました。
文献:Fast-food habits, weight gain, and insulin resistance (the CARDIA study):15-year prospective analysis
Mark Pereira et,al Lanset 2005 ( Volume 365 Issue Page 36)
病気のリスクは、ファーストフードの利用回数だけで決まるわけではなく、他の食事や生活習慣の影響もあります。
例えば、ファーストフードを週2回利用していても、他の食事できちんと栄養バランスやカロリーに気をつけていればリスクは低くなるでしょうし、逆に、利用が週1回以下だとしても、普段の食生活が乱れていれば健康上のリスクは高まるでしょう。
一般的に、ファーストフード店の利用回数が多い人は、もともと食に無頓着な傾向にあると考えられます。これらの調査でも、週2回以上ファーストフードを利用している人は、普段の食生活も乱れている可能性が高く、それも糖尿病や心疾患のリスク上昇に関与していると考えられます。
だから、週何回までなら大丈夫だとは一概に言えないのですが、少なくとも、これらの文献の結果から、「週2回より少ないほうが良い」というのが目安になります。
さらに、2つの調査は18歳以上の成人のデータですが、子どもでは生涯ファーストフードを摂取していく期間が長くなることも考慮し、月1〜2回、多くとも週1回にとどめておくのが良いと判断しました。
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いくら肥満の原因になり、健康に良くないと言っても、これからもファーストフードが無くなることはないでしょう。
子供が食べたいものばかりを自由に食べさせるのは、もちろん良くないことです。
しかし、親が完全に禁止出来るのは、小学生低学年くらいまで。
むやみに避けるのではなく、どのような食べ物が好ましいか、好ましくないかを子ども自身が理解することが大切だと思います。
「ファーストフードは身体に良くない」ということを子どもが理解し、「食べ過ぎてはいけない」と自分で判断出来るように親がはたらきかけ、ファーストフード上手く付き合っていただけたらと思います。
れいここうの
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