じめじめと暑い季節が始まりましたね。
暑くなるこれからの季節、スポーツキッズにとって気を付けなければいけない事の一つに熱中症があります。
熱中症が起こるメカニズム
熱中症には古典的熱中症と労作性熱中症という二種類があります。
古典的熱中症とは、高温の環境下でじっとしている時に起こるもので、外からの熱で体温が上昇するにもかかわらず、体内の熱を放散する機能が不十分な時に、体温が異常に上昇する状態です。このタイプは、体温調節機能が弱いご高齢の方や乳幼児で多くみられます。
一方、労作性熱中症とは、高温の環境下で体を動かしている際に起こるもので、身体の放熱機能はしっかりと働いているものの、外からの熱に加え運動による代謝熱がその機能を超えてしまい、体温が異常に上昇することです。このタイプは活発に動き代謝熱の産生が盛んな思春期以降の世代に起こりやすく、スポーツ中や肉体労働者で多く見られます。
いずれの熱中症も体温の異常上昇が本態であり、脱水症は本態ではありません。ただ、脱水症になると皮膚の血流からの放熱や発汗による体温調整がしにくくなるために、脱水は熱中症の一番の危険因子と言えるでしょう。
脱水以外の熱中症の危険因子とは?
今回はスポーツキッズの熱中症対策についてのお話なので、労作性熱中症にしぼってお話をします。
労作性熱中症の危険因子とされてるものの中で、スポーツキッズに関連しそうなものを以下にまとめました。
内的要因 |
体力不足、暑さへの順応不足 |
脱水、発熱、嘔吐、下痢、睡眠不足 | |
日焼け | |
外的要因 |
高温多湿の環境 |
放熱を妨げる装具や衣装 | |
指導者・競技者の熱中症に関する知識不足、熱中症対策の欠如 | |
不適切な運動強度、休息の不足 | |
指導者からのプレッシャーや過剰な期待 |
N Engl J Med,380(25):2449-2459,2019
Curr Sports Mmed 16(5):304-305,2017
内的要因はよく耳にするものが多いですね。先ほどお話した脱水もこちらに入ります。
また、今の時期のように急に暑くなり始めた時には、暑さへの順応が不十分なために体温調節ができず熱中症になる危険が高まります。日焼けが危険因子に入っているのは意外かもしれませんが、高度の日焼けは皮膚に傷害をきたしている状態です。皮膚には体温調整に不可欠な汗腺があるので、高度の日焼けは汗腺の働きを低下させ、熱中症のリスクが高まります。
一方で、注目すべきは外的要因です。上の二つ、環境や装具などは、競技によっては対策にも限界があると思いますが、下の三つは周囲の大人が熱中症に関する正しい知識を持って対応する事で無くすことができるリスクです。
近年は熱中症の危険性が指摘されているので、熱中症に関する知識不足は解消されてきているでしょうし、水分補給や休息に関しては意識して対策をしている場合も多いと思います。私が驚いたのは、指導者からのプレッシャーが危険因子としてあげられている点です。指導者からのプレッシャーは熱中症の直接的な原因になるわけではないですが、特に子どもにおいては指導者の期待に応えようとするあまり、限界を超えて活動してしまう事があるという事です。この点は指導者だけではなく、私達保護者も注意する必要がありそうですね。
熱中症の症状
対策をしていても熱中症のリスクをゼロにすることはできないので、初期症状を見逃さず素早く対処する事が大切です。熱中症は重症度によってⅠ度~Ⅲ度に分類されており、それぞれの特徴的な症状を以下に挙げます。
【熱中症の症状】
<Ⅰ度:軽症>
・めまい、立ちくらみ
・筋肉痛、こむら返り
<Ⅱ度:中等症>
・頭痛、吐き気
・運動強度に見合わない疲労感
・軽度の意識障害(ぼーっとする、場にそぐわない言動)
<Ⅲ度:重症>
・高度な意識障害(名前や場所がわからなくなる、呼びかけに応じない)
・痙攣
これらの症状の中でも、「ぼーっとする」「運動に見合わない疲労感」といった症状は、一見すると「まじめに競技に取り組んでいない」と判断されてしまう事もあるので注意が必要です。熱中症診療ガイドラインでも「暑熱環境における体調不良では常に熱中症を疑う」とされており、イメージで判断せずに常に熱中症を疑う意識が大切ですね。
熱中症になった時の対処法
では熱中症になった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。Ⅱ度以上の熱中症は医療機関での治療が必要になりますが、受診までの間もできることはあります。
熱中症の治療の基本は冷却と脱水の改善です。冷却の方法として最も効果的なのはアイスバス(2~14℃の冷たい水に全身入る方法)です。
アイスバスが用意できない場合は、首・足の付け根・わきの下を氷嚢で冷やす方法や、霧吹きを皮膚に吹き付けながら扇風機で送風する方法なども有効です。
本来は直腸音を測りながら冷却しますが、現場で直腸音が確認できることはほとんどないので、目安としては、本人が「寒い」というまで冷却するのが妥当とされています。
熱中症予防について
脱水に対しては、予防の場合はスポーツドリンクや水+塩分(昆布茶や梅干しなど)でも有効とされていますが、熱中症を起こすほどの脱水になっている場合は経口補水液の方が有効です。スポーツドリンクに関しては、スポーツ前には、濃度の濃いアイソトニック系のスポーツドリンク(コンビニやスーパーでも多く見かける種類)、スポーツ中には、濃度の薄いハイポトニック系のスポーツドリンク(多くは薬局で見る種類)、または、お茶がおすすめです。
帽子やプロテクターをかぶる競技の場合は、定期的に外して、熱を外に逃す。冷たい水タオルを首や頭に充てる、水をかぶる、など、体の外から冷やし、熱中症になる前に、熱くなった体を、定期的に冷却することも有効です。
子どもの特徴として、「大丈夫か?」と声をかけても、「大丈夫。」と答えてしまう傾向にあります。子どもの大丈夫を鵜呑みにするのではなく、水分を摂るように促し、定期的な休憩を設ける意識を大人が持ってもらいたいです。
熱中症後の競技復帰
熱中症を起こした場合、軽症ならばその場で回復すると思いますが、回復しても復帰せず、当日は休むようにします。そこから1~2日で少しずつ運動強度を上げるようにして競技復帰してきますが、その際、熱中症の原因が特定でき改善できる場合は復帰前に行う必要があります。
熱中症は軽症であれば少しの休養や治療で治るため、軽く見られる事もありますが、重症となると死に至る事もある大変恐ろしい病態です。スポーツキッズに関わる大人はしっかりと知識をもって対応していきたいですね。
医師・スポーツキッズ食育アドバイザリー講師
羽山涼子
スポーツキッズ食育
(社)日本キッズ食育協会では、全国でスポーツドリンクのワークショップ・セミナーを開催しています。
スポーツドリンクについて、正しい活用を聞いてみませんか。
飲み物代わりに常用しても、効果がないどころか、肥満につながる上、逆に、食欲を低下させてしまい、必要な栄養が食べ物で摂れず、夏バテに繋がってしまいます。
成長期にさしかかる子どもたちは、運動のためのエネルギーだけでなく、成長のためのエネルギーも摂りたい年齢です。
チーム単位でのお問い合わせも歓迎です。
お問い合わせ:suports@kids-shokuiku.jp 「スポーツドリンクセミナー」
羽山涼子
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