先日、とある市の職員で、学校給食に関する仕事している方とお話する機会がありました。
その市では、給食がパンの時に、マーガリンを付けることが月1回くらいあるそうです。
ある時、保護者と名乗る方から「学校給食にマーガリンを出すなんてどういうことだ!」と苦情の電話があったとのこと。
マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が健康に悪影響を与えるという事で、このような苦情がきたのだそうです。
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどの加工油脂に含まれる油です。
ずいぶん話題になっているので、皆さんも名前は聞いたことがあると思います。
飽和脂肪酸と同様、トランス脂肪酸も血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を増やすなどの作用があり、動脈硬化を促進し、心筋梗塞などの原因となります。
同じ量の飽和脂肪酸とトランス脂肪酸では、トランス脂肪酸の方がよりLDLコレステロールの数値を増加させるので、より注意すべきだとされています。
また、各国でトランス脂肪酸の摂取が規制されているのに、日本では表示の義務すらないという事が、さらに議論を巻き起こしているようです。
WHOは、生活習慣病を防ぐために、トランス脂肪酸の摂取量を、総摂取エネルギー量の1%よりも少なくするように勧告しています。
- 日本人の成人が1日にとるエネルギー量の平均は約1,900 kcalなので、この1%に相当するトランス脂肪酸量は約2グラムです。
トランス脂肪酸は食品から摂る必要がないとされているので、限りなくゼロに近づけるに越したことはありません。
では、私たち日本人は、どれくらいの量のトランス脂肪酸を摂っているのでしょうか。
農林水産省が2005年~2007年に実施した調査研究では、トランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96グラムであると推定されています。
これは平均総エネルギー摂取量の0.44~0.47%に相当し、WHOの基準である1%以下を下回っています。
しかし、これは、あくまで「平均」であることに注意が必要です。
トランス脂肪酸が多く含まれる食品は、マーガリンやショートニング、ファストスプレッドなどです。
ファストスプレッドはマーガリンの一種で、クリームの入った菓子パンなどによく使われています。
当然、これらを原料に使った市販のクッキー・ドーナツ・ケーキなどの洋菓子、揚げ物などもトランス脂肪酸が多いことになります。
※マーガリンなどは、最近トランス脂肪酸を削減したものも売り場に出てきているので、商品にもよります。
だから、これらをたくさん食べている若い世代などでは、WHOの基準を超えてトランス脂肪酸を多く摂取してしまっている可能性があるので注意が必要です。
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トランス脂肪酸のことを考える時に、ちょっと注意してほしいと思うことがあります。
それは摂りすぎが問題なのであり、ほんの微量を食べただけで即健康に影響が出るというものではないという事です。
もちろん、摂取をゼロにするのに越したことはないのですが、少し食べただけでどうかなるのでは・・・と過剰に心配する必要はありません。
また、トランス脂肪酸だけにとらわれて考えるのもあまり良くありません。
そもそも、菓子パンや洋菓子、揚げ物などをたくさん食べている人では、トランス脂肪酸の摂りすぎになるでしょうが、それ以前にそういった偏った食生活をしていること事態が問題です。
日本では食品のトランス脂肪酸量の表示義務がないので、どれくらい摂っているかわからず不安だという方もいると思います。
私も、ひとつの目安として便利なので、ぜひ表示してほしいなと思っています。
でも、きちんとバランスの取れた食事をしている人ならば、過剰摂取になっている可能性は低いと思います。
バランス良く食べていれば、トランス脂肪酸の過剰摂取を防げるのです。
バランス良く食べる目的は、必要な栄養素を摂るためだけでなく、健康を害するものの過剰摂取を防ぐためでもあるのです。
※参考資料
・農林水産省 すぐにわかるトランス脂肪酸
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/
・トランス脂肪酸に関する情報 農林水産省の取り組み

れいここうの

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